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 ”地域づくり”現地ルポ

「勝山 町並み保存地区」(岡山県真庭市) 
   岡山県真庭市勝山地区(かつやま)は、かつての城下町の風情を実感できる貴重な遺産が多く残っているとして、岡山県内ではじめて、県の「町並み保存地区」に指定されました。
   保存地区では、”ひのき草木染織”の工房が店先に一枚の「暖簾(のれん)」を出したのをきっかけに、事業所や商店、それに民家までもが相次いで暖簾を掲げるなど、住民総参加の「”暖簾”による地域づくり」として注目され、全国から多くの人が訪れ、その雰囲気を肌で感じています。
  しかし、保存地区にも、高齢化の波が押し寄せており、住民たちは町並みを永く残すために、目立ち始めた空き店舗などに新たな店の誘致を進める一方、新しい文化を保存地区に根付かせようという取り組みを始めています。
   「Oh! 元気 ねっと」では、地域づくりに対する熱意と意識の高い地区の人たちが、直面している多くの課題をクリアして、どのようにして町並みを守っていこうとしているのかに注目しています。
「勝山 町並み保存地区」は どこにあるの?どんなところ? 

「真庭市勝山地区」
 ▽「勝山 町並み保存地区」
  「勝山 町並み保存地区」は、鳥取県と中国山地が接する岡山県北部の真庭市勝山地区にあります。
  勝山地区は、かつて、勝山藩 二万三千石の城下町であり、中国山地を挟んで山陰と山陽を結ぶ、「出雲街道」の宿場町としても栄えた、2つの顔を持つ、人や物資の交流の要衝でした。

「勝山 町並み保存地区」
 ▽「町並み保存地区の指定」
  城下町・宿場町の2つの顔があったことを物語るように、勝山地区を流れる旭川(あさひかわ)を利用して「勝山地区」と「岡山」を結ぶ人や物資の運搬などに使われた「高瀬舟(たかせぶね)」の最も上流の発着地だったことをを証明する跡が今も残っているほか、出雲街道沿いには、白壁の商家や民家などの建物が軒を連ねて、当時の風情を残した町並みが続いています。
  また、旭川の川沿いに立ち並ぶ建物裏側から見た景観もしっとりとして当時の思わせるたたずまいを見せています。
  こうした町並みが貴重な遺産であるとして、昭和60年に岡山県内ではじめて、県から「勝山町並み保存地区」として指定されました。
    

スッキリとした町並みと無料休憩所
 ▽「”魅力”の保存地区をめざし整備」
   「勝山町並み保存地区」はJRの「勝山駅前」を起点に長さのべ1km。保存地区に指定されてからは、町並みの景観を最大限に生かしていくために、電線の地中化工事が行われたほか、道路も石畳道路に整備され、町並み全体が明るく、スッキリした感じが出てきました。
そのほか、
 □ 古い建物を生かした無料休憩所
 □ 無料駐車場
 □ トイレ
 などが整備されました。
  1枚の「暖簾」!保存地区に新しい風

町並みに新風を起こした「1枚の暖簾」

加納 容子さん
  ▽「1枚の”暖簾”」
  勝山町並み保存地区の指定を受けてから10年目の平成7年(1995年)。通りの店先に掲げられた「1枚の暖簾」が町並みに新しい息吹を吹き込むきっかけになりました。






  この暖簾を掲げたのは、地元勝山出身で「ひのき草木染織工房」を開いている染織家の加納 容子さん。(かのう・ようこ)
  東京の女子美術短期大学(女子美=じょしび)の生活美術科「染織コース」で専門知識を学んだ後地元に戻り、最初の草木染織の作品として制作した”暖簾”を250年余の歴史のある実家の酒屋の店先に掲げ、染織家としてデビューしました。

  その1枚の記念すべき「暖簾」がこの町並みのシンボル的存在感を見せつける新たな、やさしく爽やかな風を送り込むことになるのです。

「行藤 公典さんの会社事務所」

「行藤 公典さん」
  ▽「この”暖簾”に注目した人がいた!」
  この”暖簾”に注目したのは、現在、加納さんさんとともに「かつやま町並み保存事業を応援する会」を発足させ、その中心となって町並み保存活動を進めている、会社社長の行藤 公典さん(ゆきとう・ひろのり)です。
 




 

 行藤さんは、日ごろから会社の経理を担当している奥さんから事務所に射しこむ日差しから日焼けを予防するため、何か良い方法はないかと頼まれていました。あるとき、加納さんの工房の前を通った時、店先で揺れ動く暖簾を見て「日焼け予防はこれだ!」「町並みにもしっかりフィットする!」と直感、早速、加納さんに制作を依頼、会社の事務所前に掲げたのです。
  
保存地区で”暖簾”による地域づくり始まる
    町並みに2枚の暖簾が揺らめき始めたことがきっかけで、住民たちから大きな反響があり、平成8年(1996年)に地区の住民たちによる「かつやま町並み保存事業を応援する会」が設立され、”暖簾”による地域づくりが始まりました。

風に揺らめく”暖簾”(理容院)

おもてなしと暖簾の町並み
 ▲「町並み保存地区の”暖簾”」
  暖簾は希望する事業所や商店、それに民家がそれぞれ自主的に掲げることとし、費用の半分が個人負担、行政の「町並み保存事業」の補助も受けて制作することになり、色や形などデザインを染織家の加納さんと相談して作られたオリジナル暖簾は町並みに次々に掲げられていきました。




☚ その結果、町並みの暖簾の数は90枚にのぼっています。
暖簾は段差のないバリアフリー化され、休憩のベンチの置かれたおもてなしの行き届いた、風情ある町並みにぴったりと調和。

  古い町並みに揺らめく暖簾による地域づくりは、全国から注目され、訪れる人々も年ごとに増えています。    
  
「”暖簾”による地域づくり 住民の意識高まる」 
  ”暖簾”による地域づくりが始まったのをきっかけに、一味違った町並みに変化を感じた住民たちは、町並みづくりに参加しているという意識を強く持ちました。そして、自分たちでもっと楽しめる魅力的な町並みにしていこうという気持ちが芽生えるとともに、もっと多くの人に見てもらう魅力的なものを作り出そうという機運が盛り上がってきました。

「勝山のお雛まつり」
  ▲「勝山のお雛まつり」へ取り組む 
  住民たちのまちづくりの取り組みへの意識の高まりとともに、その手始めとなったのが「勝山のお雛まつり」への取り組みです。このおまつりは、各家で眠っているお雛様や手づくり雛を工夫して家の前などに飾り、通りを行く人に見てもらうことによって町並みを活気づけようと、勝山のお雛まつり実行委員会が組織され、平成11年(1999年)から始まりました。
  その結果、地元の人も、他の地方から来た人も楽しめるイベントとして、年を重ねるごとに盛り上がり、平成16年(2004年)には、参加するお店や民家も160軒に増えて、開催された3月1日から5日までの5日間に4万人が訪れ、大成功を収めました。 



  ▽「お雛まつり」の楽しみ方全国に波及
  「勝山のお雛まつり」の楽しみ方(方式)は、全国でも初めての試みで、全国各地から「どのようにして民家などで展示しているのか」、「どうしてまとまってこうしたイベントができるのか」などを知るために見学者が多数訪れ、住民と一緒に祭りを楽しんでいました。そして、この祭りの楽しみ方は、瞬く間に全国に波及していきました。

  こうして各地から注目されるようになった町並み保存地区では、観光客も急に増えて、平成16年(2004年)の観光客は35万人にのぼりました。
   保存地区内の整備が進み、暖簾が掲げられ、全国に波及する楽しいイベントも実施され、順風満帆に地域づくりが発展しているように見える保存地区ですが、町並みを長く残していくためには、解決していかなければならない多くの課題があります。
 当面する課題
  当面する課題:  主な課題は・・・。
           ①高齢化により目立ち始めた空き店舗・空き家をどうして行くか。
             (そのままにしておくと美観などにも良くない)
           ②町並みの存続を若い人たちに引き継がれるようにする。
           ③既存の建物の維持にかかる資金や町並み保存のためのイベントなどの活動資金の確保。
              
 「かつやま町並み保存事業を応援する会」 行藤 公典会長
   「高齢化による空き店舗などをどうしていくか、活動資金をいかに確保していくかなど様々な課題が山積していますが、今一番やらなければならないことは、住んでいる人たちにも、ほかの地方からやってきた人にも楽しく、エキサイティングな気持ちにさせるような魅力的な町並みづくりを進めていくことが大事です。
そこで、次に述べる3つの点を重点目標にして、地域づくりをめざしていて、その取り組みをすでに始めています。」
   3つの重点目標:
       ①新しいアートなどの文化を根付かせるために、芸術家に町並みに来てもらう。
       ②空き店舗などへは、業種の競合をできるだけ避けて、保存地区にない店舗を誘致する。
       ③文化を根付かせるようなイベントを企画・実施する。
 
新しい文化を根付かせようという取り組み始まった!

活動拠点「勝山文化往来館 ひしお」
 ▲「取り組みに向け 活動母体と拠点 設置」
  町並み保存地区により魅力的な文化を根付かせるための母体となる、「NPO法人勝山・町並み委員会」(理事長 行藤 公典氏)を平成17年(2005年)に発足。
  新しい文化を生む拠点(創造と発信基地)として、かつての醤油蔵を改築、ギャラリーを備えた中心となる施設「勝山文化往来館ひしお」(館長 加納 容子氏)を開館。様々な取り組みに着手。
 

創作活動する作家の作品(1)

創作活動する作家の作品(2)
 ▲取り組みⅠ「若手工芸家の進出を容易にする」
   これは、町並み保存地区で創作活動をしたいという工芸家などが空き店舗などを利用して工房などを開きたいという希望がある場合に、不動産業者に働きかけ、空き店舗などへの誘致を積極的に後押しして行こうというものです。こうした働きかけによって、勝山町並み保存地区には、これまでに岡山県内外から革製品加工など6人の工芸家が定着して、工房を開くなど新しい文化が醸成されようとしています。



☚真庭市地域雇用創造協議会の
   パンフレットから

 

ひのき草木染織のコースター&ハンカチ
(加納 容子さんの作品)
 ▲取り組みⅡ「保存地区にない業種のお店誘致」
   一方、もう一つの空き店舗対策として、保存地区にない業種で、地元の人たちが待ち望んでいるお店を誘致して知名度を上げようという、新しいお店の誘致の取り組みが行われています。2013年には、保存地区になかった「パン屋さん」が店開きし、焼き立てのパンを販売、これを聞いて遠いところからも買いにやってくるなど、地区の住民たちからも喜ばれています。








 

人気の「勝山のお雛まつり」
 ▲取り組みⅢ「新たな文化を根付かせるイベントに工夫」
イベント①「好評の”勝山のお雛まつり”をさらに発展」
   「勝山のお雛まつり」は「各家で眠っているお雛様を家の前に出してみんなが見えるように飾る」もので、先進地として自慢のお雛様を飾る民家をさらに増やすとともに、地元の人たちも、全国から見物でやってくる人たちにもっともっと楽しめるよう、住民からもアイデアを募り、さらに発展させていくことにしています。






工芸家招き「体験クラフト市」

保存地区の通りで「体験クラフト市」
イベント②「勝山町並み・体験クラフト市に工芸作家招く」
   「勝山町並み・体験クラフト市」は、町並みの空き家などを利用し、訪れる人たちとクラフト作家たちが手仕事を共有することで様々な交流が生まれることをめざしていています。また、作家たちが地元の人々と触れ合うことにより、勝山の良さを知って定住し、勝山の新たな魅力となることを願っています。勝山への進出を促す取り組みです。
  






 モノづくりの文化を注入し、地区内の活性化を図る取り組みによって、工芸作家が勝山に移り住み工房を開くなど、新たな展開への効果を期待しているものです。



スタンプラリー用「のれんMAP」
イベント③「町並みスタンプラリーでPR」
   あすの「勝山町並み保存地区」を担う小・中学を含めた県内外の多くの人たちに、”暖簾”の町並みに興味と理解をもってもらうことと、PRすることを目的に、暖簾地図を片手に町並み保存地区を歩いて、目的の暖簾を探し当て、勝山の特産品を当てる、暖簾によるスタンプラリーも2012年から始まっています。






   「Oh! 元気 ねっと」は、2013年11月下旬に勝山地区にお邪魔し、その財産である「町並み保存地区」を実際に歩いて、”暖簾”による文化の香りの高い地域づくりの現状を見させていただいた。保存地区内は、道路の段差もなくバリアフリー化が進み、そこに住んでいる人たちから、”(豆炭を燃やしたコタツに)あたっていかないかい!”と暖かい声をかけられ、遠慮なく暖をとらせいただくなど、おもてなしあふれる人々と会話を楽しみ、美味しい地元の料理などに舌づつみを打ち、スッキリした気持ちで取材を終えました。
   そこで、「Oh! 元気 ねっと」は、新たな取り組みに挑み始めた保存地区の次の点に注目しています。
 「Oh! 元気 ねっと」の注目点 

   保存地区を歩く人々
  
▲注目点1「訪れた人に保存地区の情報を提供する態勢」
 (説明)
  私が、保存地区を訪ねた2013年11月下旬、出会ったのは、広島県福山市からやってきた団体、バイオマス関連の工場見学でやってきた兵庫県の団体、そのほか湯原温泉(ゆばら)へ行く予定だったものの雪による道路の交通止めで行けず、たまたま立ち寄ったという1団体と若いカップル2組でした。この人々は、気の向くままに保存地区を歩き、土産品店に立ち寄って買い物をしたりして帰ってゆきました。出会った人々から話を聞きましたが”暖簾”に気付いた人はいたものの、まったく認識していなかった人もおり、初めて来た人に”地区の楽しみ方”を教えてあげたら、もっと楽しんでもらえたのにと思いました。また、保存地区であった日々の動き(人・イベント・食など)を発信し、勝山のホットで活気のあるところを全国に向けてPRしていったらよいと感じました。
 (注目点)
①”保存地区での楽しみ方・過ごし方”を提供する態勢の確立。
②”ここを見てもらいたい!”住人全員が案内人の意識を持つ。
③”相手の趣味・興味”を聞き、適切にお店などを紹介する。
④保存地区の日々の動きをブログなどで、その日のうちに全国へ向け発信。

「 下駄の鼻緒 暖簾」(履物店)
▲注目点2「”暖簾”を意識しながら町歩きを楽しんでもらう」 
 (説明)
  保存地区のお店を訪ねてみましたが、”暖簾”の模様が分からず「ここは何屋さん」と尋ねられることがよくあるそうです。
  履物店の店主は、「下駄をはいたことがない子どもが多いためか”鼻緒がデザインされた暖簾”が分からないようです。店内の現物を見てもらい、しっかり覚えてもらうようにしています」と話しています。模様を見て、何屋さんか分かると、町歩きも一層楽しくなると思います。
 (注目点)
折角の”暖簾”ですから、どうして”このデザイン”になったのか、その説明書きなどがあると、理解しやすくなります。親子や友達どうして、
”暖簾”を見ながら、何の店かクイズのような形式で答えを当て合うなど、遊び心で保存地区歩きをしてもらうのも”暖簾”を理解してもらう上で、良いかと思います。

 「保存地区で買い物をする人々」
▲注目点3「近隣の観光地などとのPRで連携」
 (説明)
  (先程も述べましたが)勝山で出会った人たちのうち1団体とカップル2組は、いずれも目的は勝山ではなく、車で北へ約20分ほどのところにある湯原温泉でした。
 (注目点)
  多くの人に保存地区に立ち寄って見てもらいたいという見方から考えますと、県内や近隣の広島・兵庫の各県を含む地域の温泉、文化・観光施設などと連携しあって、利用客の流通をはかれるよう、PRしていく取り組みが必要になってくると感じます。
  ▲注目点4「多くの芸術家が進出する態勢づくり」
 
「落ち着いた雰囲気を魅せる保存地区」
 (注目点)
①保存地区および周辺の魅力を発展、新たに発掘する。
②空き店舗などの活用など 誘致のための雰囲気づくり。
③地区内で活躍中の芸術家の創作活動を紹介・PRの強化。 



 問い合わせ
 
    勝山町並み保存地区


       〒717-0013
       岡山県真庭市勝山162-3

           「勝山文化往来館 ひしお
      NPO法人「勝山・町並み委員会」
            TEL:0867-44-5880
     リンク:
  
        「勝山文化往来館 ひしお」HP


       勝山ブログ情報:
            ・ 勝山文化往来館「ひしお」
            

            ・ 勝山”のれんの揺れるまち”
    

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